L-シトルリンで血管機能血流アップ
スイカから発見された天然成分
L-シトルリンは、自然界の動植物に広く含まれているアミノ酸の一種です。とくにウリ科の植物に含まれていて、スイカはその代表です。私たちが普段食べている栽培種のスイカはもちろんのこと、アフリカ南部のカラハリ砂漠に自生している野生種のスイカのL-シトルリン含有量は、他の食品を圧倒しています。
L-シトルリンの組織中濃度
L-シトルリンの働きを考えると、砂漠で生育するスイカにL-シトルリンが多いのは非常に理にかなっています。高温で日差しの強い乾燥した砂漠地帯で生き延びるのは大変なことです。そこでスイカは、自らの身を守る方法として、L-シトルリンを合成・蓄積するしくみを長い歴史の中で獲得したのでしょう。そして、そうしたスイカの防衛機能力は、砂漠で暮らす人や動物にも昔から大きな恩恵をもたらしてきたと考えられます。
私たちの体内では、L-シトルリンは血液中をはじめ、筋肉や臓器など、あらゆる組織に分布しています。アミノ酸は一般に、タンパク質の構成成分として知られています。しかし、L-シトルリンは独立した形で体内に存在し、体のあちこちで重要な働きをしています。遊離アミノ酸と呼ばれるタイプのものです。
2007年に食品として認可
L-シトルリンが発見されたのは、1930年のことです。日本人の学者が、スイカの果汁から分離したのが最初でした。このとき、スイカの学名であるCitrullus vulgarisをもとにシトルリンの名がつけられたといわれています。ちなみに、シトルリンはLタイプのほかに、Dタイプのものも存在します。自然界ではLタイプが一般的です。
日本では、これまでL-シトルリンは食品として市場に流通することができませんでした。なぜなら、私たちの口に入るものはすべて厚生労働省の食薬区分リストによて医薬品か非医薬品に分類されていますが、つい最近までL-シトルリンに関しては明確な分類がなされていなかったからです。ところが、2007年4月の食薬区分の改正で、厚生労働省はL-シトルリンを非医薬品に分類することを発表。同年8月の食品衛生法上の解釈通知を待って、ついにL-シトルリンを食品として利用することが可能となりました。以後、サプリメントをはじめ、一般食品へのL-シトルリンの利用が急速に進んでいます。L-シトルリンに秘められた大きな健康効果を考えると、食品としての流通が解禁されたことは、とても重要な出来事といえます。
欧州では20年以上の利用実績が
ヨーロッパでは、すでに20年以上前から、L-シトルリンが利用されてきました。正確にいうと、ヨーロッパの市場で流通しているのは、L-シトルリン単体ではなく、L-シトルリンにリンゴ酸を結合したシトルリンマレート(L-シトルリン-リンゴ酸塩)と呼ばれるものです。このシトルリンマレートが
疲労回復に効果のあるOTC(医師の処方箋なしで薬局・薬店で購入できる薬=大衆薬)として、現在に至るまで広く使われています。また、フランスでは、同じシトルリンマレートがスティモールの名で医薬品登録され、医療施設で処方されています。
他方、アメリカでは、L-シトルリン単体とシトルリンマレートがともにサプリメントとして流通しています。いずれも、筋肉増強や運動パフォーマンスの向上に役立つスポーツ栄養素として高い人気を誇っています。また、精力増強、血流改善、心疾患予防を目的として利用しているケースも多いようです。
このように、欧米ではL-シトルリンが一般に広く流通しています。そのため、食品としての安全性を含めて、利用実績に基づいた研究データがたくさん蓄積されています。
効果の秘密はNOの産生促進
L-シトルリンの健康効果は、主に一酸化窒素(NO)の体内産生を促す働きによって発揮されます。L-シトルリンを摂取すると、主に腎臓でL-アルギニンという物質に変換されますが、このL-アルギニンが一酸化窒素の主原料であることから、結果的に一酸化窒素の賛成が活発になるのです。一酸化窒素は、体中でさまざまな機能にメッセンジャーとして関与しています。その重要性は、一酸化窒素のシグナル伝達機能を明らかにした学者に対して、1998年にノーベル賞が与えられた事実からもわかります。
メッセンジャーとしての一酸化窒素の役割について、もう少し詳しく説明しましょう。私たちの体は、脳の神経細胞から伸びた長い突起(神経線維)が張り巡らされています。それらの突起の先端(シナプス)では、絶えず神経伝達物質がやりとりされていて、体のあらゆる情報を脳へ伝えています。やけどをしたり、怪我をしたりしたときに「熱い」「痛い」と感じるのはこのためです。また、脳の中でも神経伝達物質のキャッチボールが常に行われ、記憶の形成や感情のコントロールがなされています。伝達物質には色々な種類がありますが、その1つが一酸化窒素なのです。一酸化窒素は、幅広い領域でメッセンジャーとして働くため、あらゆる組織の機能に関与しています。
一酸化窒素(NO)サイクル
血液の流れをスムーズに保つ
L-シトルリンの摂取で体内産生が活性化する一酸化窒素の働きで、真っ先に注目したいのは、血管系への影響です。一酸化窒素は、血管を広げて血圧を調整し、血液の流れをよくする働きがあります。例えば、狭心症の発作が起こったとき、ニトログリセリンを服用すると症状が改善されることが知られています。これはニトログリセリンが体内で一酸化窒素に変化し、心臓の冠動脈を拡張して血流を促すためです。
一酸化窒素が血流を促す背景には、動脈硬化を抑える働きも関係しています。動脈硬化というのは、血管壁に血小板やコレステロールなどの成分が付着して、血管が硬くなったり、細くなったりする症状です。ときには、血管壁(平滑筋)が異常に増殖することで動脈硬化が進む場合もあります。一酸化窒素は、血管壁に血小板などが付着するのを防ぐほか、血管壁の増殖を阻害する作用もあるといわれています。血小板の過剰な凝集を抑えることができれば、心筋梗塞や脳梗塞・脳血栓のような血栓症予防にも役立ちます。
L-シトルリンを摂取すると、そうした一酸化窒素による血流促進効果が得られます。血液は、全身の組織に酸素と栄養を運ぶ重要な担い手です。したがって、その流れが滞ると、さまざまな病気の引き金をなったり、老化が進んだりします。L-シトルリンには、ニトログリセリンのような即効性はありませんが、日ごろからL-シトルリンを補給していると、全身の血液の流れがよくなり、細胞レベルから健康体を維持できます。
免疫力の低下を抑える効果も
一酸化窒素のもう1つの重要な働きとして、免疫に対する作用があります。免疫というのは、体に備わった病気と闘うしくみのことです。体内には白血球と呼ばれる膨大な数の兵士が常駐していて、外部から侵入してくる細菌やウィルス、あるいは体内で生じるがんの芽などを逐次、排除しています。白血球のうち、最前線で活躍しているのがマクロファージです。マクロファージは、敵を倒すための強力な武器を装備しています。それが一酸化窒素です。実は過度のストレスを受けると、体内のL-アルギニンが不足して、免疫力の低下が起こることが知られています。そのため、ストレスの多い現代人にとって、L-アルギニンを増やし、一酸化窒素の産生を高めるL-シトルリンの働きはとても重要です。
ヒドロキシラジカルを速効で排除
L-シトルリンは、活性酸素の害を防ぐ働きもあります。活性酸素はとても反応性の高い酸素で、体内に必要以上に増えると、病気や老化を促すほか、がんが発生する危険性も高まります。活性酸素のなかでも、特に凶悪性が強いのが、ヒドロキシラジカルです。L-シトルリンは、このヒドロキシラジカルの排除に役立ちます。抗酸化作用と呼ばれる働きです。ヒドロキシラジカルの掃除屋(スカベンジャー)としては、マンニトールという物質が知られていますが、L-シトルリンはマンニトールの2倍の速度ででヒドロキシラジカルを排除することが確認されています。日差しの強い砂漠に生育する野生のスイカにL-シトルリンが多いのも、日光の紫外線によって発生する活性酸素から身を守ることが1つの原因と考えられます。
有害なアンモニアの解毒を促す
激しい運動や労働をすると、筋肉疲労、精神疲労が生じます。これは体の中に多量に発生した有害なアンモニアによって、筋肉中に疲労物質(乳酸)が蓄積したり、神経の働きが低下したりするためです。通常、アンモニアは肝臓で無毒な尿素に変えられ、速やかに排泄されます。オルニチン回路と呼ばれるしくみです。L-シトルリンは、L-アルギニン、L-オルニチンとともに、このオルニチン回路の構成成分として、アンモニアの解毒にも関わっています。
動物実験では、L-シトルリンの投与で、運動中に筋肉に蓄積するアンモニアの代謝が促進すること、オルニチン回路の機能が補完されることが明らかにされています。また、致死量のアンモニアをラットの腹腔内に投与した実験では、オルニチン回路に関与している3つのアミノ酸(L-シトルリン、L-アルギニン、L-オルニチン)の混合物を不空内投与することで、ラットの生存率が20〜35倍も高まることが確認されています。L-シトルリンは、オルニチン回路とは別の側面からもアンモニアの除去に働くとの報告もあります。こうした働きから、L-シトルリンは疲労回復の特効成分として期待されていて、アメリカではアスリートの間でL-シトルリンのサプリメントが人気を呼んでいます。
L-シトルリンを摂取する利点
これまで述べてきたように、L-シトルリンは、私たちの生命活動にさまざまな形で関与しています。まさに健康を保つうえで欠かせない成分ですが、ここで1つの疑問が生じます。L-シトルリンの効果の多くは、L-アルギニンを介した一酸化窒素の働きによることは説明しました。とすると、L-シトルリンではなく、L-アルギニンを摂ったほうが効率的ではないのか、という疑問です。
しかし、実際は、むしろL-シトルリンを摂ったときのほうが、L-アルギニンの効果が得やすいことが、次のような動物実験で証明されます。ラットを2群に分けて、一方にはL-アルギニンを与え、もう一方には同量のL-シトルリンを与えたところ、L-シトルリン食群のほうが、血液中のL-アルギニンの量が1.7倍も高まったと報告されているのです。L-シトルリン食群とL-アルギニン食群で、血液中のL-アルギニン濃度に差が出たのは、実は両者の吸収のされ方に理由があります。L-アルギニンを摂取した場合、腸から吸収されるのは半分程度で、吸収されたL-アルギニンも、その多くが肝臓で消費されるといわれています。一方、腸管や肝臓でほとんど代謝を受けないまま、大部分が体内でL-アルギニンに変換されます。そのため、L-シトルリンを摂取したときのほうが、効率よく全身にL-アルギニンを供給できるのです。加えて、L-シトルリンを摂取すると、L-シトルリン単独の効果も期待できます。
高血圧の予防と改善に最適
L-シトルリンは、高血圧対策に大変効果的です。高血圧とは、なんらかの原因で血液の流れが悪くなり、ポンプ役の心臓が、全身に血液をめぐらせるために必死でポンプ機能を高めている状態です。血流が悪くなる主な原因としては、過度の血管収縮や動脈硬化の進行があげられますが、L-シトルリンはいずれの改善にも役立つことは前で説明しました。
実際に、L-シトルリンの摂取が、血圧の正常化に効果を発揮することは、次のような実験で明らかにされています。高濃度の食塩(NaCl)を与えて6日間飼育したラットは血圧が148mmHgに達したのに対し、同量の食塩とともにL-シトルリンを腹腔内投与したラットの血圧は106mmHgに抑えられたというのです。
L-シトルリンは、先天性心疾患の手術後に発生しやすい「術後肺高血圧症」の予防効果も報告されています。例えば、40名の先天性心疾患の子供の患者さんを2つのグループに分けて、一方のグループの患者さんにだけ、心臓肺バイパス手術中と手術後にL-シトルリンを投与した研究があります。それによると、L-シトルリンの血中濃度が37μmol/L以上の患者さんには、術後肺高血圧はみられなかったと報告されています。
虚血による障害から心臓を守る
日本で増えている代表的な病気の1つに、虚血性心疾患があります。心筋梗塞や狭心症がこの代表です。虚血性心疾患は、心臓を養っている冠動脈の動脈硬化が進行し、狭窄や閉塞によって心筋への血流が遮断されてしまうために起こります。L-シトルリンが血流促進に役立つことは、先に説明しました。その効果は、L-シトルリンの摂取で体内産生が高まる一酸化窒素の抗血栓作用および血管拡張作用に由来するということでした。したがって、L-シトルリンの日常的な摂取は、虚血性心疾患の予防と改善に最適です。ちなみに、心臓発作は血圧が上がる早朝に起こりやすいことが知られていますが、血管壁で産生される一酸化窒素の量が最低レベルになることも一因といわれています。そうしたことを防ぐためにも、日ごろからL-シトルリンを補っておきたいものです。
さらに、L-シトルリンは、虚血後の再灌流障害を防ぐ効果も期待されています。虚血後の再灌流障害には、多核白血球という物質が深く関わっています。多核白血球が心筋に増えると、心臓の収縮不全を引き起こしたり、心筋の壊死を促すのです。試験管内の実験では、20分間の虚血後に再灌流した場合、L-シトルリンは信金に蓄積する多核白血球を抑えるとともに、血圧を改善し、心臓の左心室を保護することが確認されています。
他方、鎌状赤血球症の患者さんは、白血球の数が通常より多く、血栓ができやすい状態にあり、心臓肥大の合併症もみられます。この鎌状赤血球症の患者さん5名(10〜18歳)に、L-シトルリンを4週間にわたって摂取してもらった研究が報告されています。それによると、心臓左心室の肥大が軽減し、白血球の数も有意に減少したといいます。鎌状赤血球症の合併症対策にも、L-シトルリンは役立ちそうです。
疲労回復、運動能力の向上に
ヨーロッパでは、L−シトルリンにリンゴ酸を結合させたシトルリンマレートが、疲労回復のOTC(大衆薬)または医薬品として利用されていることは先に紹介しました。アメリカでも、このシトルリンマレートが、疲労回復や運動能力の向上に役立つサプリメントとして広く流通しています。そうしたことから、シトルリンマレートの抗疲労効果、運動能力向上効果については、数多くのデータが発表されています。以下に紹介しましょう。
実験動物に、エンドキシンという物質を投与すると、人工的に疲労を誘発することができます。症状としては、食事量の低下や筋肉パフォーマンスの低下などがみられます。ところが、ラットにエンドキシンを投与しても、シトルリンマレートを食べさせると、エサの摂取量が有意に上昇し、運動パフォーマンスが向上すること、さらに疲労を示す指数(F1)も、エンドキシンを与えない群とほぼ同じレベルに保たれることなどが、複数の実験で報告されています。
疲労感を訴えている男性18名に対して、15日間にわたってシトルリンマレートを摂取してもらった試験もあります。その結果、シトルリンマレートの摂取で、運動中のATP(アデノシン三リン酸=筋収縮のエネルギー源)の合成が平均34%増大。エネルギー貯蔵物質(ホスホクレアチン)も20%回復したと報告されています。
別の試験では、20名の対象者にシトルリンマレートを3日間摂取してもらっています。すると、対照群(プラセボ群)に比べて、シトルリンマレートを摂取していたグループの人たちは、血液中の尿素と重炭酸の量が有意に増えていたといいます。尿素の増加は、疲労につながるアンモニアの解毒が促されていることを示しています。ちなみに通常は、体内で尿素が作られるときに重炭酸が消費されますが、シトルリンマレートは、肝臓で尿素の産生を刺激する一方で、腎臓での重炭酸再取り込みを活性化すると考えられています。こうしたシトルリンマレートの効果はアンモニア解毒のほか、糖新生を促したり、激しい有酸素運動の回復を早めるうえで役立ちます。
これまでに報告されている研究データをみると、疲労および運動能力に対するシトルリンマレートの効果は、次の5つの作用に基づいて発揮されると考えられます。
- 有酸素運動のATP生成向上
- アンモニアの除去
- 乳酸の消費を増やす
- 血流促進
- L-アルギニンの前駆体として、タンパク質の合成を促す(=筋肉増強)
脳卒中の予防にも効果的
L-シトルリンには、脳卒中(脳梗塞、脳出血)の予防効果も期待できます。試験管内の実験ですが、以下に紹介しましょう。実験では、豚の脳大動脈を単離し、電極刺激下で張力測定実験を行っています。その結果、NOS(一酸化窒素合成酵素)阻害剤による神経性の血管拡張阻害を、L-シトルリンは濃度依存的に回復させることが確認されています。L-シトルリンは、大脳の血管周辺の神経でL-アルギニンに再生されて、血管拡張作用を生み出すと考えられています。
認知症に対する可能性
認知症は、発症する原因によって大きく2つのタイプに分けることができます。1つは、脳卒中の後遺症として発症する脳血管性の認知症、そしてもう1つが原因の明らかでないアルツハイマー病です。L-シトルリンは、前に述べたように脳の血管を拡げることで脳卒中の予防に役立ちますから、脳血管性の認知症対策に有効と思われます。
他方、アルツハイマー病に対しても、L-シトルリンが効果的に働く可能性が示されています。順に説明しましょう。アルツハイマー病で亡くなった患者さんの脳を調べてみると、老人斑と呼ばれるコメ粒大のシミのようなものがたくさんできています。老人斑とは、ベータアミロイドという線維状のタンパク質が蓄積したものです。そうしたことから、脳の中にベータアミロイドが過剰に蓄積することが、アルツハイマー病の重大な引き金になるのではないか、という仮説が有力視されています。実は、L-シトルリンは、このベータアミロイド形成を阻害する働きのあることが、試験管内の実験で明らかにされています。ベータアミロイドは、ストレスによって生じやすいことが知られていますが、熱ストレスによるインスリン分子のアミロイド形成を、L-シトルリンは完全に阻害したというのです。
このほか、L-シトルリンの摂取で体内産生が高まる一酸化窒素(NO)は、脳の神経細胞でも作られています。脳で作られた一酸化窒素は、記憶の保持・検索をするなど、記憶や学習に密接に関与していることが分かっています。認知症に対するL-シトルリンの効果は、まだ不明な点が多いのですが、今後の研究が大いに期待されている分野です。
高齢者、病人の栄養状態の改善に
高齢になると食事の量が減るとともに、栄養素の消化吸収が鈍くなります。そのため、意識して栄養補給に努めないと、足腰の筋肉が弱ってしまいます。L-シトルリンは、そうした加齢による筋肉の衰えを防ぐうえでも効果を発揮します。栄養不良の高齢ラットにL-シトルリンを1週間与えたところ、食事制限群に比べて、肝臓でのタンパク質、および頚骨筋のタンパク質がともに高値だったと報告されています。L-シトルリンを摂ることで、筋肉でのタンパク質の合成が促されたと考えられます。
一方、腸管を切除した人や、短腸症候群の患者さんは、L-アルギニンが不足する場合があります。腸は、L-アルギニン代謝の重要な拠点だからです。そこで、L-アルギニンの前駆物質であるL-シトルリンを使って、次のような動物実験が試みられています。小腸の80%を切除したラットを対照群、L-アルギニン投与群、L-シトルリン投与群の3つに分け、10日後の血漿アルギニン濃度を比較しました。その結果、L-シトルリン投与群は、他の2群に比べて有意に高値となりました。筋肉中のアルギニン濃度についても同様の結果が得られています。
血漿アルギニン濃度の比較
うるおいのある美肌づくりに
L-シトルリンは、私たちの皮膚にも比較的多く存在します。皮膚は、外側から表皮・真皮・皮下脂肪に分けられますが、このうち、表皮の最上層にある角質と呼ばれる部分で、L-シトルリンは肌のうるおいを保つ天然の保湿因子として働いています。そうしたことから、L-シトルリンは美肌成分としても注目されています。
保湿効果のほか、L-シトルリンはシミ・シワ対策にも貢献します。太陽の日差しを過剰に浴びると皮膚が黒ずんできますが、これは太陽の紫外線が表皮中に多量の活性酸素を生み出し、メラニン色素が産生されるからです。通常、表皮は活発にターンオーバーと呼ばれる新陳代謝を繰り返し、メラノサイトで造られたメラニン色素は徐々に押し上げられて、角質とともに垢として排出されます。ところが、新陳代謝が衰えたりして、過剰なメラニン色素を排出しきれずに沈着したのがシミです。また、活性酸素が皮膚の本体である真皮を直撃すると、今度はシワやたるみが出来やすくなります。真皮の70%はコラーゲンと呼ばれる線維状のタンパク質で出来ていて、肌のハリを保つ原動力tなっていますが、活性酸素はこのコラーゲン線維も障害するからです。日常的にL-シトルリンを補っていると、こうした紫外線によるシミやシワの予防に効果が期待できます。
精力増強、冷え性対策にも
L-シトルリンは、男性の精力アップに大変有効です。L-シトルリンはの摂取で体内に生じる一酸化窒素の働きをもとに開発されたのが、勃起不全治療薬のバイアグラです。
一方、女性の冷え性対策にも、L-シトルリンが強い味方となります。血液の流れが滞って、体の隅々まで血液が十分に行き届かなくなると、手足をはじめ、体が冷えやすくなります。体の冷えはさまざまな病気の引き金になるので要注意です。血管を拡張して血行をよくするL-シトルリンは、冷え性の女性にぜひおすすめです。
寄生虫の感染を防ぐ効果もある
寄生虫の感染を抑える効果については、次のような研究で成果がみられています。マウスのお腹からマクロファージ(貪食細胞ともいわれる白血球)を取り出し、マクロファージ活性化作用を持つインターフェロンγとエンドトキシンで刺激した後、L-シトルリンを加えてNO2(一酸化窒素の指標の1つ)の産生量を測定しました。その結果、L-シトルリンの添加量が多いほどNO2の産生量が増加し、NO2の量が75μMを上回ると寄生虫の感染を完全に抑えることができたと報告されています。
ハート出版 ふるさと文庫より